内定承諾後に辞退できる?民法627条の考え方と判例、連絡の仕方・損害賠償が心配なときの相談先
結論(先に3行で)
- 内定を承諾したあとでも、学生の側から辞退を申し出ることはできると考えられています。民法第627条第1項は、期間の定めのない雇用は、各当事者がいつでも解約の申入れができ、申入れから2週間で終了すると定めています。
- 判例では、採用内定通知によって、就労の始期を卒業直後とし、一定の取消事由による解約権を留保した労働契約が成立したとされたものがあります(大日本印刷事件、最高裁昭和54年7月20日判決。一般に「始期付・解約権留保付の労働契約」と呼ばれます)。ただし内定・承諾の状況は一つ一つ違い、どう当てはまるかはこのサイトでは断定しません。
- 辞退を決めたら、できるだけ早く、電話とメールで、理由は簡潔に伝えます。強く引き留められたり損害賠償を言われたりしたら、大学のキャリアセンター、新卒応援ハローワーク、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。
この記事でやること:辞退するかを自分で決める → 決めたらその日のうちに採用担当へ電話(不在ならメール)→ メールでも辞退の意思を残す → 強い引き留めや請求の話があれば記録して相談先へ。
内定と内々定は、法律の上で何が違う?
政府の日程では、正式な内定日は卒業・修了年度の10月1日以降とされています。それより前に企業から伝えられる「採用する予定です」という連絡は、一般に「内々定」と呼ばれます。
判例では、採用内定通知が誓約書の提出とあいまって、就労の始期を大学卒業の直後とし、それまでに誓約書に書かれた取消事由に当たることがあれば内定を取り消せる労働契約が成立した、と判断されたものがあります。厚生労働省の「確かめよう労働条件」で紹介されている大日本印刷事件(最高裁第二小法廷 昭和54年7月20日判決)です。このような契約は一般に「始期付・解約権留保付の労働契約」と呼ばれます。始期付とは「入社日から働き始める」、解約権留保付とは「卒業できなかった場合など、決められた理由があれば解約できる」という意味です。
ただし、内定・内々定がどの段階で労働契約と同じ重みを持つかは、企業からの通知の内容、承諾書の有無、その後のやり取りなどによって個別に判断されます。このサイトでは「この場合は必ずこうなる」とは言い切りません。
学生の側から辞退できる根拠は?
民法第627条第1項は、雇用の期間を定めなかったときは、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができ、雇用は解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了すると定めています。正社員のように期間の定めのない雇用では、働く側から辞めることができる、という基本のルールです。
内定によって労働契約が成立していると考えられる場合も、この考え方から、学生の側から辞退(解約の申入れ)をすることはできると一般に説明されています。一方で、内定の段階に民法第627条がそのまま当てはまるのか、入社日が近い時期の辞退をどう考えるかなどは、事情によって判断が分かれる可能性があり、このサイトでは断定しません。
内々定の段階で出した承諾書は、どう考える?
政府の要請とあわせて示された大学等の申合せでは、9月30日以前の内々定は学生を拘束しないことを周知するとされ、正式な内定に至るまで複数の内々定を持ち続けることは望ましくないとも書かれています。就職問題懇談会の要請は、企業に対して、内々定の段階で内定承諾書や誓約書の提出を求めることを慎むよう求めています。
承諾書を出したことは、辞退してはいけない理由にはなりません。ただ、企業は承諾を前提に採用の計画を立てているので、辞退を決めたら、できるだけ早く伝えるのが誠実な対応です。
辞退の連絡は、どうすればいい?
| 順番 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 辞退するかを自分で決める | 迷っている段階で連絡しない。家族やキャリアセンターに相談してよい |
| 2 | 採用担当者に電話する | 始業直後・昼休み・終業間際を避ける。不在なら折り返しの時間を聞く |
| 3 | メールでも辞退の意思を伝える | 電話の内容を、日付と名前を入れて文字で残す |
| 4 | 書類・貸与物があれば返送する | 承諾書の返却を求められたら指示に従う |
| 5 | エージェント経由なら担当者にも伝える | 企業への連絡を代行してもらう場合も、決めるのは自分 |
メールの例文です(実在の人の文面ではなく、書き方の例です)。
理由は「熟慮の結果、別の進路を選んだ」程度で十分です。他社の名前を言う必要はありません。
「損害賠償を請求する」と言われたら?
辞退の連絡をしたときに、強く引き留められたり、研修費などの費用を払うよう言われたりすることがあるかもしれません。請求に応じなければならないかどうかは、具体的な事情によって変わるため、このサイトでは断定しません。その場で支払いや署名を約束せず、言われた内容を記録して、次の窓口に相談してください。
- 大学のキャリアセンター・学生相談室
- 新卒応援ハローワーク(大学等を卒業予定の学生も対象)
- 都道府県労働局の総合労働相談コーナー
辞退を申し出た学生を何度も話し合いに呼んで引き留めることは、労働局のリーフレットでオワハラの例として挙げられています。詳しくはオワハラとは?対処と相談先を読んでください。
辞退しなくて済むように、承諾の前にできることは?
辞退の多くは、複数の内定を比べる前に承諾してしまったり、労働条件を確かめずに承諾してしまったりすることから起こります。承諾の前に、次のことを確認しましょう。
- 返事の期限と、ほかの選考の結果を待てるか
- 労働条件通知書などの書面(就業場所・業務と「変更の範囲」、賃金、固定残業代、休日、試用期間)
- 入社前の研修や課題の有無と、その時期
- 自分が働く部署・勤務地のイメージ
確認する労働条件の詳細は内定承諾の前に確認する労働条件にまとめています。
就活エージェント経由の内定を辞退するときは?
エージェントを通して応募した企業の内定を辞退する場合は、まずエージェントの担当者に伝えるのが一般的です。担当者が企業への連絡を代行してくれることが多いですが、辞退するかどうかを決めるのは学生自身です。
担当者から考え直すよう勧められることがあっても、決めたことは変えなくてかまいません。政府の要請は、就活エージェント等による他社の就職活動終了の強要にも注意を促しています。仕組みは就活エージェントはなぜ無料?にあります。
入社の直前に辞退したくなったら?
卒業が近い時期や入社の直前に、辞退したくなることもあります。企業の側では、入社の準備(配属・研修・備品など)が進んでいるため、影響が大きくなります。それでも辞退を決めたなら、引き延ばさずに、決めた日のうちに連絡してください。
迷っている段階なら、何が不安なのかを書き出してみましょう。仕事内容・勤務地・労働条件の不安であれば、企業の人事に質問すると解消できることもあります。体調や家庭の事情などが理由なら、大学のキャリアセンターや学生相談室にも相談してください。
よくある質問
- 内定承諾後に辞退できる?
- 学生の側から辞退を申し出ることはできると考えられています。民法第627条第1項は、期間の定めのない雇用は解約の申入れから2週間で終了すると定めています。ただし個別の事情でどう判断されるかは、このサイトでは断定しません。
- 内定辞退はメールだけでいい?
- まず電話で伝え、メールでも辞退の意思を残すのがおすすめです。電話がつながらない場合は、メールで先に伝えてから折り返しを待ちます。
- 内々定の承諾書を出したら辞退できない?
- 大学等の申合せでは、9月30日以前の内々定は学生を拘束しないことを周知するとしています。承諾書を出したことだけで辞退できなくなるわけではありませんが、決めたら早く伝えてください。
- 損害賠償を請求すると言われたら?
- その場で支払いや署名を約束せず、内容を記録して、大学のキャリアセンター、新卒応援ハローワーク、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。
出典・確認したページ
- e-Gov法令検索「民法」第627条:期間の定めのない雇用は解約の申入れから2週間で終了(2026-11-03確認)
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「採用内定取消」の裁判例:大日本印刷事件(最二小判昭和54.7.20):採用内定通知は誓約書の提出とあいまって、就労の始期を大学卒業直後とし、誓約書記載の取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したとした判例(一般に「始期付・解約権留保付の労働契約」と呼ばれる。ページ上の要旨にこの語自体はない)(2026-11-03確認)
- 内閣官房「2027年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請」別紙(要請事項):学事日程への配慮(土日・夕方以降・オンライン)、セクハラ・パワハラに類する行為の防止、内定・内々定と引き換えに他社への就職活動の終了を強要する行為(オワハラ)は許されない、保護者の同意を求める「オヤカク」もオワハラに該当し得る、就活エージェント等による強要への注意、卒業・修了後少なくとも3年以内の既卒者が新卒枠に応募できるように。就職問題懇談会の要請(三省合意を踏まえたインターンシップ、オープン・カンパニー等で得た学生情報は採用活動に使わない、内々定段階の承諾書・誓約書の要求を慎む 等)、大学等の申合せ(9月30日以前の内々定は学生を拘束しないことを周知)(2026-11-03確認)
- 就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議「2027年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」(令和7年12月26日):2027年度卒業・修了予定者(2028年3月卒)は従来どおり、広報活動 卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降、採用選考活動 卒業・修了年度の6月1日以降、正式な内定日 卒業・修了年度の10月1日以降を原則とする。専門活用型インターンシップ(2週間以上)参加者の例外は従前どおり。2028年度(2029年3月)以降の卒業・修了予定者は見直しの検討を進める。要請は法的に拘束するものではない(2026-11-03確認)
- 都道府県労働局・ハローワーク「学生の職業選択の自由を侵害する『オワハラ』は行わないでください!!」(事業主・職業紹介事業者向けリーフレット):オワハラの定義(内定・内々定と引き換えに、学生の意思に反して他の企業への就職活動の終了を強要するハラスメント行為)、例(推薦状の要求、他社の就活をやめるよう迫る、内定承諾書の早期提出・保護者の同意の強要、研修等への参加要求、辞退を申し出た学生を何度も呼び出して引き留める)、職業選択の自由の侵害、場合により脅迫罪・強要罪・不法行為に当たる可能性、若者雇用促進法第7条の指針(2026-11-03確認)
- 厚生労働省「新卒応援ハローワークのメニュー」:対象は大学等を卒業予定の学生・生徒、卒業後おおむね3年以内の方、各都道府県に1か所以上・全国56か所。担当者を決めた個別支援(就職支援ナビゲーター)、臨床心理士等への相談、応募書類(ES・履歴書)の作成支援、面接対策、セミナー、全国の求人情報の検索・閲覧、企業説明会・面接会、就職後の定着支援(2026-11-03確認)
- e-Gov法令検索「労働基準法」:第15条(労働条件の明示。明示された条件が事実と違う場合は即時に契約を解除できる)(2026-11-03確認)
- 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」:全ての労働者に就業場所・業務の「変更の範囲」の明示が追加。有期契約は更新上限なども(2026-11-03確認)
この記事は 2026-11-03 時点で公的機関・各社公式ページを確認して書いています。制度や各社の条件は変わることがあるため、申込み前に公式ページで最新情報を確認してください。体験談・口コミは掲載していません。